日中対照言語学会会報(No.13)

2011年2月10日発行
会報担当:佐藤富士雄 高橋弥守彦
 

目次

  1. 日中対照言語学会常務理事会審議結果
  2. 1月定例月例会報告
  3. 1月特別例会
  4. 2月特別例会(連語論大会)
  5. 2011年度日中対照言語学会春季大会研究発表者募集
  6. 事務局より                                                               

1.日中対照言語学会常務理事会(2011年1月22日開催)審議結果(いずれも承認)

出席者:佐藤富士雄(理事長)、高橋弥守彦(副理事長)、王学群(事務局長)、
    鈴木義昭、竹島毅、石毛文茂、安本真弓(会計担当)、橋本幸枝(書記担当)

議題1.2010年度冬期大会の報告(佐藤理事長と会計の安本氏より)

12月26日(日)、大阪産業大学梅田サテライトキャンパスにて開催。
関西地区の理事、常務理事の方々が会場の提供、発表者の推薦、大学院生への参加呼びかけ等に尽力された結果、京都外国語大学の岡本俊裕氏の総合司会の下、研究発表8本、参加者57名で、活発な質疑応答が繰り広げられ、盛会のうちに終了した。当日入会者も13名にのぼった。
資料:2010年冬期大会の研究発表:タイトルと発表者氏名、所属機関

1)『“这/那”の主観的用法とその日本語訳の特徴をめぐって』杨蕾(京都外国語大学院生)
2)『日中指示詞の対照研究』杉山さやか(京都大学院生)・刘骉(京都大学院生)
3)『日本語の擬態語における類義語の意味相違-「すっきり」と「さっぱり」の意味相違と中国語訳をめぐって-』贾晓雯(京都外国語大学院生)
4)『近代漢語における中国西学からの借用語に関する研究-判定基準問題と辞書編纂問題をめぐって-』王灿娟(九州大学院生)
5)『テキストにおける主語のあり方と視点との関わり-日中の新聞の比較を中心として-』彭广陆(関西学院大学交換教授・北京大学)
6)『日本語の「カキ料理構文」とそれに対応する中国語表現』王亚新(東洋大学)
7)『“VP+的”と「VP+の」の意味指示の多義性と多義性解消の条件』黄毅燕(関西学院大学・北京外国語大学院生)
8)『日中対照研究から見る限定語の語順について』高橋弥守彦(大東文化大学)

この外、昼休みを利用して高電社大阪支店中東幹雅氏による「4ヶ国語音声読み上げソフト World Voice日中英韓」のデモンストレーションが行われた。

議題2.関西地区次期役員体制について(佐藤理事長より)

 現在:張黎常務理事(副理事長・関西地区責任者)、余維常務理事、下地早智子理事、中川裕三理事、彭飛理事
 次期:(1) 張黎副理事長が満期退任のご意向なので、次期副理事長兼関西地区責任者の人選を鋭意進めて、春期大会の当日開催する総会で推薦、承認を得るようにしたい。
 具体的には、昨年12月の冬期大会終了後に、佐藤理事長より中川裕三理事に打診し、内諾を得ているので、その方向で考えていきたい。
    (2) 関西地区の会員が増加し、毎年冬期大会を開催する仕事もできたので、現在の理事、常務理事に加えて、これまで熱心に活動してこられた数名の方に役員就任を依頼したい。具体的には、中川裕三理事、下地早智子理事、彭飛理事に常務理事就任を、岡本俊裕会員に理事就任をお願いしてみたい。
    (3) 関西地区役員の増員に伴い、常務理事会の開き方を改善する必要が生じる。会の財政状況から見て、関西地区等からの高額の出張旅費は支出できないので、当面実行可能な方法として、事前に議題と提案の内容をメール等で知らせて、理事長宛に意見を提出していただき、それを当日の審議に先立って紹介し、議論に反映させるようにしてはどうか。

議題3.関東地区次期役員体制について

  現在;佐藤富士雄理事長、高橋弥守彦副理事長、王学群事務局長、続三義査読委員長、安本真弓会計担当理事、および常務理事、理事
  次期;佐藤富士雄理事長は任期満了で退任。会計の安本理事は退任希望。高橋副理事長、王学群事務局長、続三義査読委員長および他の常務理事、理事は次期も継続して就任可能。次期理事長と会計担当の人選を春期大会までに進め、総会に提案、承認を得ることにしたい。

議題4.会則の一部改定の必要性について

1)理事・常務理事の追加選出

 実際に活動している方に新たに常務理事や理事になっていただき、退任を希望する方には退いていただくことにしたい。

2)日本で入会した後帰国した外国人会員の会費の金額と納入方法について、基準を設け会則に盛り込みたい。

 例えば、中国に帰国した中国人会員の場合、現在の為替レート(1元=12円~13円)から計算して、一般会員は300元、院生会員は半額の150元とする原案を次回の総会に提案することにする。台湾をはじめ、他地域の会員の場合も、これに準じて金額を決める方向で検討する。

3)会則第8条:「名誉会員」に関連して

 高齢化社会を迎え、定年退職後も引き続き会員として活動することを希望する会員が増加する事態に備え、常務理事会の厳格な審査を経て年会費を全額免除する「名誉会員」制度に加えて、本人の申告に基づき形式的な審査で資格を認める「シニア会員」(仮称)の制度を設け、年会費を院生会員と同じ金額(現在2000円)にして、経済的負担を軽減しながら会員としての権利を保障することにし、会則の第9条としてこの制度に関する規定を盛り込みたい。→承認

議題5.『日中言語対照研究論集』の次号(第13号)の編集状況について

 5月25日前後に完成予定。3年に1度発行する特集(今回は『ヴォイス特集』)は、10月に完成予定。

議題6.2011年度春期大会の準備について

 会場は大東文化大学に決定。開催日は5月29日(日)を第1候補、5月22日(日)を2候補とし、他の学会との重複、会場の予約状況を勘案しながら、早急に決定する。3月30日締め切りで研究発表を募集する。大会の開始時間は、遠距離参加者の便宜を考慮し、関西大会と同じく午前10時とする。

議題7.学会誌寄贈の要請について

王学群事務局長より、国立国語研究所図書室から連絡が有り、学会誌を発行の都度1部寄贈してほしいとの要望が寄せられているので、承諾して寄贈することにしたいとの提案あり。張黎、高橋弥守彦両副理事長より北京社会科学院沈家煊教授に学会誌10,11,12号贈呈の提案あり。

以上執筆責任 佐藤富士雄
 

2.1月定例月例会報告

 日中対照言語学会1月定例月例会(1月17日18:00~20:00)は、大東文化会館K401で開催された。研究発表者は以下の2名、司会は大東文化大学の山口直人が担当した。

1)ひと:石毛達也(大東文化大学大学院中国語学専攻修士課程1年)

テーマ:“把”構文における状況語の語順について。

 要旨:香坂順一(1962)において、ある条件のもとで、“把”構文中の状況語は「“把”+名詞」の前後に置くことができると指摘している。また、刘月华(2001)においても言語事実からほぼ同様のことが述べられている。

(1)马上把队伍解散!(《实用现代汉语语法》p.738)
(2)我把他向外拉,但拉不动。(《实用现代汉语语法》p.738)

 本発表では連語論の観点から、“把”構文中における「“把”+名詞」と状況語の語順の関係について明らかにした。例えば、副詞“已经”などはよく「“把”+名詞」の前に用いられるが、それは連語にひとまとまり性「“把”+名詞+動詞」があるからであり、副詞などが「“把”+名詞」の後に用いられる場合は動詞との関係が密接であり、両者では文構造が異なることを明らかにした。今後は、“把”構文中の状況語が2つ以上ある場合、状況語の前後関係について連語論の観点から研究していきたい旨の考えが述べられた。 

2)ひと:中島克哉(大東文化大学大学院中国語学専攻修士課程1年)

テーマ:“怎么”を用いる反語文について

要旨:中国人は一般的な日常会話の中で、反語文を用いて強い感情表現をする傾向にある。これは多民族国家に住む民族の特徴だと思われる。それに対し、日本人はどのような場面でも、可能であれば、できるだけ感情をおさえ表面に出さない傾向にある。それほど日本人は感情を表面に出すことを嫌う民族のように思われる。中日両国では、このように環境が違い、感情表現も違うので、両言語を翻訳する際には多少の違いを考慮に入れたほうがよいように思われる。特に日本語は反語表現が極端に少ないので、中国語の反語文となると日本語ではどのように訳したらいいのか迷うところである。そこで本発表では、実例によりどのように訳すべきかを検討した。また、中国語では反語文を作るには疑問詞や副詞、語気助詞などを用いるが、今回は疑問代詞“怎么”を用いた反語表現に注目し、“怎么”で作る反語表現を体系的にまとめるとともに、疑問文と反語文の違いを明らかにした。しかしながら、反語文が疑問文のような表現にならないのか、反語文と疑問文の境界線がはっきりと区分できるのかなどの問題点があった。今後はこれらの問題点について談話論の観点から明らかにしていくつもりである。

3.1月特別例会

 日中対照言語学会1月特別例会(1月22日[土]10:30~12:00)は、大東文化会館K302で開催された。講演(テーマ:動詞がなぜ主語や客語になれるのか)は、認知言語学の第一人者北京社会科学院の沈家煊教授、司会は大東文化大学の高橋が担当した。沈家煊教授は名詞を中心とする「包含模式」の学説により、このテーマを解明した。参加者は30名余りであり、活発な質疑応答がなされた。

4.2月特別例会(連語論大会)

とき:2月6日[日]10:00~17:00 ところ:東洋大学甫水会館301教室 総合司会:王玉林(北京外国語大学)、司会:王亜新、王学群、続三義(各東洋大学)

研究発表:神野智久(大東文化大学院生)、李所成(北京外国語大学講師)、鄭英愛(大東文化大学院生)、白愛仙(大東文化大学非常勤)

シンポジウム:鈴木康之(大東文化大学名誉教授)、彭広陸(北京大学教授)、呉大綱(上海外国語大学教授)

午前中は4名の研究発表者があった。細かいところでは多少の問題があるものの、それぞれがレベルの高い内容であった。質疑応答も活発に行われた。午後はシンポジウムであり、鈴木康之先生の一生をかけた連語論に関する講演と先生の高弟2人の連語論に関する発表であり、濃い内容であった。こちらの質疑応答の時間は2時間ほどあったが、かなり厳しい問題も提起され、質問の中にはパネリストも同様な疑問を抱くなどのところもあった。このシンポジウムを通して、連語論研究が発展途上にあることをうかがわせた。出席者は60余名であり、散会後も名残惜しいようで、それぞれ30分以上の話し合いがあり、和やかな雰囲気のうちに解散した。

5.2011年度日中対照言語学会春季大会研究発表者募集

 2011年度春季大会は5月下旬に大東文化会館で開催されます。研究発表をご希望される研究者・院生の皆様は3月30日までにテーマと要旨(500字前後)を佐藤富士雄、高橋弥守彦、王学群のいずれかまでお申し込みください。

以上執筆責任 高橋弥守彦
 

事務局より  

1)学会の入会は、日中対照言語学会ホームページ上で随時受け付けています。年間会費は社会人4000円、院生2000円となっています。皆さんの入会を歓迎いたします。

2)毎月の例会の開催は、郵送ではなく、メールにてご連絡させて頂いております。不明の方がいらっしゃいますので、ぜひお知らせいただきたくお願い申し上げます。また、メール変更につきましても、同様にお願い申し上げます。


Last-modified: 2013-12-07 (土) 12:40:51