日中対照言語学会会報(No.20)2012年10月29日(月)発行
会報担当:高橋弥守彦 豊嶋裕子
目次
日中対照言語学会第28回大会 (2012年度冬季大会)のご案内12月9日(日)、大阪産業大学梅田サテライトで日中対照言語学会冬季大会(第28回大会)が開催されます。会員の皆様におかれましてはふるってご参加ください。非会員の方の参加も歓迎いたします。本大会のプログラムは以下の通りです。 記 日 時:2012年12月9日(日)午前9時00分より午後5時30分まで 会 場:大阪産業大学梅田サテライト(JR大阪駅南口下車、阪神百貨店右の通り を直進、徒歩5分、大阪駅前第三ビル19階。大阪市北区梅田1-1-3。 電話 06-6442-5522) 参加費:1000円(会員、非会員共通) プ ロ グ ラ ム 受付(9:00-) 総合司会 安本真由美(高千穂大学) 大会開催校挨拶 張黎(大阪産業大学) 9:20- 9:30 開会の辞 鈴木義明(早稲田大学) 9:30- 9:40 研究発表1.中国語の“对面”“旁边”“周围”“周边”の用い方及び日本語訳の特徴 郭芳菲(京都外国語大学大学院博士前期課程) 9:40-10:15 研究発表2.日中対訳における意志表現の「スル」の対訳形式の選択 10:15-10:50 孫樹喬(神戸外国語大学大学院生) 以上司会 彭飛(京都外国語大学) 休憩(15分:10:50-11:05) 研究発表3.「視点」研究における二人称の位置付けについて―「やる/くれる」, 「行く/来る」,“去/来”を例に― 古賀悠太郎(神戸市外国語大学院) 11:05-11:40 研究発表4.条件接続表現における日中対照研究――「たら」「なら」に対応する中国 語表現を中心に 李慧(九州大学大学院比較社会文化学府博士課程) 11:40-12:15 以上司会 下地 早智子(神戸市外国語大学) 昼休み(60分 ビルの階下に食堂街あり) 12:15-13:15 研究発表5.“这/那”の指示機能虚化から見た中日指示詞の非対応 13:15-13:50 邱 麗君(大東文化大学大学院博士後期課程) 研究発表6.日本語助数詞「枚」と関連している中国語量詞“张”“片”“面”“块” における認知分析 長野由季(株ヒューマンサービス中国語講座楽学) 13:50-14:25 以上司会 竹島毅(大東文化大学) 休憩(15分:14:25-14:40) 講演:テンスとムード 14:40-15:40 工藤真由美(大阪大学) 研究発表7.日本語と中国語の誤用例研究 15:40-16:15 藤田昌志(三重大学) 以上司会 王学群(東洋大学) 研究発表8.選択解釈と疑問解釈 16:15-16:50 王 慶(九州外国語学院・非常勤講師) 研究発表9.日中対照関係から見る中国語の使役表現について 16:50-17:25 高橋弥守彦(大東文化大学) 以上司会 余維(関西外国語大学) 閉会の辞 豊嶋裕子(東海大学) 17:25-17:35 ※当日入会申し込み、学会費の納入も受け付けます。(年会費:社会人4000円、院生 2000円) 2.日中対照言語学会拡大常務理事会審議結果10月20日(土)15時~17時 於 大東文化会館K-401 (1)2012年度冬季大会について 1)日時:12月9日(日)9:00~17:30 (2)学会誌15号について 現在15本の投稿があり、例年どおり査読によって13本程度を選ぶ予定。 (3)特集号について テーマは「日本語と中国語のヴォイス」で、白帝社より10月26日出版予定。 (4)特集大会について 次会のテーマは「モダリティー」。開催地や日時について12月に大阪の会員と相談。 (5)諸手当などの支払い状況について 会計担当理事に会則に基づき2万円を支払う。 (6)その他 ①来年度の春季大会は、5月か6月に開催予定。他の学会との重複を避け、更に検討する。 (以上文責 豊嶋裕子)
3.2012年10月定例月例会報告(司会:高橋弥守彦)ひと:馬一川(大東文化大学・北京外国語大学交換留学生博士課程後期2年) 研究発表概要 (1)日本語の条件表現に対応する中国語の関連詞“就”の意味について ―非現実の事態を表す“就”を中心に― 馬一川 日本語の典型的な条件表現「レバ形式」「タラ形式」「ナラ形式」は、一般的には中国語の関連詞が、それに対応する。その内、最も多く使用されるのは関連詞“就”である。関連詞“就”は時間副詞“就”から派生したので、現実の事態を表す文によく使われる。従来の研究は、主にこの“就”を中心にとりあげ、意味的には「事態間の時間的継起性と近接性」を表すと結論を下している。一方、非現実の事態を表す“就”についての考察は少なく、王1994、中島2007、李2011で少し検討しているものの、“就”の意味問題に関しては依然として不明な状態である。 本稿は、現実の事態を表す“就”の「時間的継起性と近接性」の意味を手がかりに、日本語の条件表現に対応する非現実の事態を表す“就”の意味解明を試みている。一言でいうと、“就”の本来の「継起性」は「前件の条件から後件の帰結を引き出す」ことに意味変化し、本来の「時間的近接性」は、客観的論理基準による「前件条件の成立に従って後件帰結も成立する」と主観的論理基準による「前件条件の成立に従って後件帰結の成立度も高い」ことに意味変化したと考えられる。つまり、日本語の条件表現に対応する“就”は「前件条件から後件帰結を引き出し、前件条件の成立に従って後件帰結も成立する、あるいは、成立する可能性が高い」を意味とすることが明らかになった。 (2)無対他動詞の結果達成性について 汪然 宮島(1985)以来、無対他動詞には変化の傾向が必ずしも含意されていないと見なされている。しかし、「失う」「選ぶ」「殺す」「払う」は同じ無対他動詞でありながら、疑いなく過去である条件で既に結果を達成していることを表している。 筆者は、無対他動詞の中では、ある程度のものは変化の傾向を表している見なし、無対他動詞の結果達成性について考察を行った。そして、限界性、意図性、変化性の傾向という3つのパラメータを設けて、結果達成ランクへの一歩を進めた。考察範囲としては、『日本語基本動詞用法辞典』(小泉保ほか1989)から抜き出した145語の和語の単純語である。 3つのパラメータによれば、パターンAからパターンHまで8種類に分けられる。パターンAからパターンHまでには、無対他動詞の結果達成性がだんだん弱くなっていくことが見られる。結果達成性には、最も強いパターンAからかなり高いパターンEまでで、今回の考察総数の54%を占めている。場合によって結果達成を表すパターンFは42%を占めており、結果性の全くないパターンHは4%しか占めていない。このことから、無対他動詞は総体的に見れば、結果達成性のかなり高い動詞と言える。 キーワード:無対他動詞 結果 限界性 意図性 変化 文責 高橋弥守彦
事務局だより1)学会の入会は、日中対照言語学会ホームページ上で随時受け付けています。ただし、申し込みができない場合は王学群事務局長(Lwn365@yahoo.co.jp)、または竹島毅理事(sisi@crest.ocn.ne.jp)までご連絡をください。年間会費は社会人4000円、院生2000円となっています。皆さんの入会を歓迎いたします。 2)毎月の例会の開催は、郵送ではなく、メールにてご連絡させて頂いております。不明の方がいらっしゃいますので、ぜひお知らせいただきたくお願い申し上げます。また、メール変更につきましても、同様にお願い申し上げます。 |